2004年、春。
長岡市三島地域(旧三島町)のおよそ中央に位置する“はなみずき団地”と広域農道を結ぶ新しいランド
マーク 『みしま大橋』 が一級河川黒川に架かった。
長岡方面へのアクセス向上による地域間のふれあいや交流が今以上に活発になると期待されている。
長岡市三島地域(旧三島町)のおよそ中央に位置する“はなみずき団地”と広域農道を結ぶ新しいランド
マーク 『みしま大橋』 が一級河川黒川に架かった。
長岡方面へのアクセス向上による地域間のふれあいや交流が今以上に活発になると期待されている。
5月9日(日曜)大安吉日。
地元の方々による安全祈願祭・渡初め式が無事執り行われ、子どもからお年寄りまで皆の顔に笑顔が満ち溢れていた。そして、この橋の完成目指し、全力を尽くし頑張った工事に携わった者たちの努力と苦労が大きな成果として結実した日でもあった。
誰かひとりが言った。「いい仕事ができて良かった。」と…。「良かった、良かった。」と、誰ともなく声が聞こえた。
工事に携わった者たちの目に見えない情熱と汗、そして確かな“現場力”が、その礎になっていると感じた。
地元の方々による安全祈願祭・渡初め式が無事執り行われ、子どもからお年寄りまで皆の顔に笑顔が満ち溢れていた。そして、この橋の完成目指し、全力を尽くし頑張った工事に携わった者たちの努力と苦労が大きな成果として結実した日でもあった。
誰かひとりが言った。「いい仕事ができて良かった。」と…。「良かった、良かった。」と、誰ともなく声が聞こえた。
工事に携わった者たちの目に見えない情熱と汗、そして確かな“現場力”が、その礎になっていると感じた。
【 Project 01 】:取付道路・橋脚工・旧橋撤去工事
2001年、初秋。
山長組工事部の稲庭と柿倉が図面を開き、黒川を見ていた。
稲庭知之。工事所長。河川改修・コンクリート構造物のエキスパートとして、誰もが信頼をよせる技術者である。
柿倉亘。工事主任。稲庭の右腕として、着実に実力をつけてきた期待の技術者である。
--- 工事概要 ---
1. 取付道路工; 盛土10,100m3、袋詰式サンドドレーン 292本
2. 橋脚工; P1橋脚 1基(h=9.7m)
3. 旧橋解体工; 米山橋 76.6m2, 松ノ木橋 112.7m2
稲庭は、当初から特殊工法への不安と工程の厳しさを直感していた。
盛土10,100m3、袋詰式サンドドレーン292本…。軟弱地盤対策工法である。地中に強靭な網袋に砂を詰めた排水柱を形成し、地盤の圧密を促進させる。盛土施工速度5cm/日、沈下板で動態観測を行う。
「やるしかない!とにかく、急ごう。」 施工計画を考えに考え抜いた。
「新設する取付道路の脇に工事用道路を別に設け、取付道路・橋脚工・旧橋解体を平行施工すれば、何とか
3月末まで完了する。あとは、お天道様のご機嫌次第だ。」 工程は現場稼働率70%で工期いっぱい、クリティカルパスは仮桟橋を含めた橋脚工事だった。春先の雪解けによる黒川の増水が気になっていた。
毎朝、誰よりも早く現場を巡回していた稲庭の熱意と執念が全員に伝わり、現場の士気を高めていた。
「亘!中心線・角度をチェックしたか。距離は間違いないか。」「バイブレータのかけ方はこうだ!」「水中ポンプを点検しろ。」、毎日、稲庭の声が現場に響いていた。盛土も予定どおり終わった。不思議と橋脚のコンクリート打設日は毎回天候に恵まれ、橋脚も品質・出来栄えともよくできた。黒川の増水の影響も僅か2日間だった。
そして、2002年3月24日夕方。最後の工事用機械が 現場を後にした。工期1日前だった。
柿倉が工事を振り返り言った。「無我夢中だった。だた、稲庭所長の仕事に妥協しない姿勢に現場全員がついていった。」 稲庭たちのものづくりへの執念が“現場力”であった。
山長組工事部の稲庭と柿倉が図面を開き、黒川を見ていた。
稲庭知之。工事所長。河川改修・コンクリート構造物のエキスパートとして、誰もが信頼をよせる技術者である。
柿倉亘。工事主任。稲庭の右腕として、着実に実力をつけてきた期待の技術者である。
--- 工事概要 ---
1. 取付道路工; 盛土10,100m3、袋詰式サンドドレーン 292本
2. 橋脚工; P1橋脚 1基(h=9.7m)
3. 旧橋解体工; 米山橋 76.6m2, 松ノ木橋 112.7m2
稲庭は、当初から特殊工法への不安と工程の厳しさを直感していた。
盛土10,100m3、袋詰式サンドドレーン292本…。軟弱地盤対策工法である。地中に強靭な網袋に砂を詰めた排水柱を形成し、地盤の圧密を促進させる。盛土施工速度5cm/日、沈下板で動態観測を行う。
「やるしかない!とにかく、急ごう。」 施工計画を考えに考え抜いた。
「新設する取付道路の脇に工事用道路を別に設け、取付道路・橋脚工・旧橋解体を平行施工すれば、何とか
3月末まで完了する。あとは、お天道様のご機嫌次第だ。」 工程は現場稼働率70%で工期いっぱい、クリティカルパスは仮桟橋を含めた橋脚工事だった。春先の雪解けによる黒川の増水が気になっていた。
毎朝、誰よりも早く現場を巡回していた稲庭の熱意と執念が全員に伝わり、現場の士気を高めていた。
「亘!中心線・角度をチェックしたか。距離は間違いないか。」「バイブレータのかけ方はこうだ!」「水中ポンプを点検しろ。」、毎日、稲庭の声が現場に響いていた。盛土も予定どおり終わった。不思議と橋脚のコンクリート打設日は毎回天候に恵まれ、橋脚も品質・出来栄えともよくできた。黒川の増水の影響も僅か2日間だった。
そして、2002年3月24日夕方。最後の工事用機械が 現場を後にした。工期1日前だった。
柿倉が工事を振り返り言った。「無我夢中だった。だた、稲庭所長の仕事に妥協しない姿勢に現場全員がついていった。」 稲庭たちのものづくりへの執念が“現場力”であった。
【 Project 02 】:橋台工事
2003年、冬。小正月の頃。
山長組佐藤常務(当時)は、降る雪を見ながら、「積もらんといいがなぁ。」と思っていた。
佐藤勝利。工事所長。その緻密な技術と知識は、今も、山長組を支え続けている“真の技術者”である。
「佐藤常務と仕事をしたい。技術を吸収したい。」と、ひとりの若手技術者がいた。
石橋友和。工事担当。経験は浅いが、向上心旺盛で直向きな姿勢で取組む成長株の技術者である。
--- 工事概要 ---
1. 河川土工; 掘削4,700m3、整形仕上工1,020m2
2. 橋台工; A1橋台、A2橋台 2基
3. 護岸工; 高水敷護岸 1式
2月に入り、雪も小康状態となった。佐藤は晴れた休日、ひとりで現場の排雪作業を行いながら考えていた。
「よし、2月下旬から橋台工事スタートだ。そうすれば、4月、5月の温暖な時期にコンクリート工事になる。梅雨明けから護岸を行えば最適だ。」工程は的中した。そして、橋台の施工精度も計画通り、1cm以内に収まり、その精度と技術の高さは、橋桁製作メーカーを驚かせた。これが、“真の技術者”と言われる佐藤の真髄であった。
石橋は工事を振り返り言った。「佐藤常務には無駄がない。測量や丁張の出し方、工程、人の使い方まで。」
「自分には、まだまだ真似できない…。」と。佐藤の陣頭指揮のもと、動いた“現場力”は新たな目標をもち、動きはじめた。
山長組佐藤常務(当時)は、降る雪を見ながら、「積もらんといいがなぁ。」と思っていた。
佐藤勝利。工事所長。その緻密な技術と知識は、今も、山長組を支え続けている“真の技術者”である。
「佐藤常務と仕事をしたい。技術を吸収したい。」と、ひとりの若手技術者がいた。
石橋友和。工事担当。経験は浅いが、向上心旺盛で直向きな姿勢で取組む成長株の技術者である。
--- 工事概要 ---
1. 河川土工; 掘削4,700m3、整形仕上工1,020m2
2. 橋台工; A1橋台、A2橋台 2基
3. 護岸工; 高水敷護岸 1式
2月に入り、雪も小康状態となった。佐藤は晴れた休日、ひとりで現場の排雪作業を行いながら考えていた。
「よし、2月下旬から橋台工事スタートだ。そうすれば、4月、5月の温暖な時期にコンクリート工事になる。梅雨明けから護岸を行えば最適だ。」工程は的中した。そして、橋台の施工精度も計画通り、1cm以内に収まり、その精度と技術の高さは、橋桁製作メーカーを驚かせた。これが、“真の技術者”と言われる佐藤の真髄であった。
石橋は工事を振り返り言った。「佐藤常務には無駄がない。測量や丁張の出し方、工程、人の使い方まで。」
「自分には、まだまだ真似できない…。」と。佐藤の陣頭指揮のもと、動いた“現場力”は新たな目標をもち、動きはじめた。
【 Project 03 】:堤防掘削・築堤・低水護岸工事
2003年、夏。盆休み明け。
山長組工事部の名古屋は、完成した間近のみしま大橋橋台工事を見ていた。
名古屋均。工事所長。測量・図面のエキスパートで、現場運営にもセンスの光る円熟期の技術者である。
「これは大変だ。上部工の着工前に低水護岸を終わらせなければならない。現場をチェックしたら、矢板護岸の材料をすぐに手配しよう。」
--- 工事概要 ---
1. 護岸工; 119.7m (広幅鋼矢板Ⅱ型 L=8.5m 200枚)
2. 掘削工; 5,600m3
3. 築堤工; 1,187.9m
先手を打った鋼矢板材料手配が功を奏した。上部工の桁架設前の11月末、桁下部の施工が終わった。
「これで、上下作業がなくなる。作業員の安全が守れた。」 誰よりも安全作業に慎重な名古屋はホッとした。
「あとは、降雪前までに土工事だ。」と気持ちを切り替え、作業前にダンプ運転手を全員召集した。
「過積載は絶対禁止だ。運行経路を守れ。現場に出るときは保安帽をかぶれ。ルール違反は退場だ!」
現場全員の気を引き締め、士気を高めた。高い安全意識が“現場力”となり、緩やか曲線美の護岸ができた。
山長組工事部の名古屋は、完成した間近のみしま大橋橋台工事を見ていた。
名古屋均。工事所長。測量・図面のエキスパートで、現場運営にもセンスの光る円熟期の技術者である。
「これは大変だ。上部工の着工前に低水護岸を終わらせなければならない。現場をチェックしたら、矢板護岸の材料をすぐに手配しよう。」
--- 工事概要 ---
1. 護岸工; 119.7m (広幅鋼矢板Ⅱ型 L=8.5m 200枚)
2. 掘削工; 5,600m3
3. 築堤工; 1,187.9m
先手を打った鋼矢板材料手配が功を奏した。上部工の桁架設前の11月末、桁下部の施工が終わった。
「これで、上下作業がなくなる。作業員の安全が守れた。」 誰よりも安全作業に慎重な名古屋はホッとした。
「あとは、降雪前までに土工事だ。」と気持ちを切り替え、作業前にダンプ運転手を全員召集した。
「過積載は絶対禁止だ。運行経路を守れ。現場に出るときは保安帽をかぶれ。ルール違反は退場だ!」
現場全員の気を引き締め、士気を高めた。高い安全意識が“現場力”となり、緩やか曲線美の護岸ができた。
【 Project 04 】:床版・取付道路工事
2003年、夏。盆休み明け。取付道路のセンター測量を行う、山長組工事部の石橋がいた。
橋台工事を離れ、現場代理人としてひとつの現場を任された。
--- 工事概要 ---
1. 取付道路工; 右岸・左岸 一式
「佐藤常務のようには、まだできない。でも、自分の責任の下、現場が動く。まず、自分で現場を見て、考えよう。それから、佐藤常務に相談しよう。」 石橋は常々、佐藤の背中を見て、自ら考える技術者になりたいと思っていた。
現場測量をしながら、ふと気づいた。「農業用水パイプラインがある。新設道路の横断部を含めた敷設替えが必要だ。」 設計にないため、必死の図面作成と材料の拾い出しが始まった。土地改良区との打合せを繰返し、何度も図面の修正を行った。深夜、ときには休日も費やした。とにかく、「自分がやらなければ…。」
ただ、それだけだった。やっとの思いで土地改良区の承諾を得ることができ、施工した。
「石橋さん。すごいね。図面がしっかりしているから難しい配管も楽にできたよ。材料もピッタリだよ。」 作業員からの労いの言葉だった。石橋も、「ありがとうございました。お疲れ様でした。」と、作業員を労った。
チームワークが大きな“現場力”となった。
橋台工事を離れ、現場代理人としてひとつの現場を任された。
--- 工事概要 ---
1. 取付道路工; 右岸・左岸 一式
「佐藤常務のようには、まだできない。でも、自分の責任の下、現場が動く。まず、自分で現場を見て、考えよう。それから、佐藤常務に相談しよう。」 石橋は常々、佐藤の背中を見て、自ら考える技術者になりたいと思っていた。
現場測量をしながら、ふと気づいた。「農業用水パイプラインがある。新設道路の横断部を含めた敷設替えが必要だ。」 設計にないため、必死の図面作成と材料の拾い出しが始まった。土地改良区との打合せを繰返し、何度も図面の修正を行った。深夜、ときには休日も費やした。とにかく、「自分がやらなければ…。」
ただ、それだけだった。やっとの思いで土地改良区の承諾を得ることができ、施工した。
「石橋さん。すごいね。図面がしっかりしているから難しい配管も楽にできたよ。材料もピッタリだよ。」 作業員からの労いの言葉だった。石橋も、「ありがとうございました。お疲れ様でした。」と、作業員を労った。
チームワークが大きな“現場力”となった。
2003年、12月。橋桁の架設が始まった。
「遅い。3月竣功までギリギリだ。床版コンクリート工事は2月になる。寒中コンクリートだ。」 この厳しい施工条件が山長組佐藤常務の技術屋魂に火をつけた。「工期を守り、寒中施工での品質を確保する。」 固く決意した。
--- 工事概要 ---
1. 床版工; 一連 (床版型枠 678m2 、 鉄筋 41.85t、 コンクリート 177m3)
2004年、1月。桁架設が終わり、型枠工事が始まった頃、佐藤の頭の中にコンクリート打設計画ができた。
*降雪・積雪への対処
…床版上面を横2分割できるシートで覆い、温水高圧洗浄機を配備して除雪・排雪を軽減し、氷雪の付着を
取除く。
*コンクリート打設の対処
…コンクリートの凍害の恐れの少ない早強コンクリートを使う。コンクリートポンプ車の圧送管を打設前に予め温めて、管
内にモルタル分の凍結・付着によるトラブルを防ぐ。
*コンクリート養生
…床版全体をシートで覆い、床版下面は練炭(2m間隔毎)で3日間、5~10℃で保温する。風の影響を受け易い床版上面は、練炭の加えポリエチレンダクトへの温風給熱養生を一晩行う。保温養生後も急激な温度低下
を防ぐため、シートは型枠解体後まで残置する。
「よし、これだ。」 佐藤は作業員、協力会社を集め説明し、実行した。鉄筋組立中に大雪に見舞われた時もあったが、自ら先頭に立ち、除雪した。佐藤の入念な計画はうまくいった。
2004年3月23日。すべての舗装が終わり、みしま大橋が完成した。
「遅い。3月竣功までギリギリだ。床版コンクリート工事は2月になる。寒中コンクリートだ。」 この厳しい施工条件が山長組佐藤常務の技術屋魂に火をつけた。「工期を守り、寒中施工での品質を確保する。」 固く決意した。
--- 工事概要 ---
1. 床版工; 一連 (床版型枠 678m2 、 鉄筋 41.85t、 コンクリート 177m3)
2004年、1月。桁架設が終わり、型枠工事が始まった頃、佐藤の頭の中にコンクリート打設計画ができた。
*降雪・積雪への対処
…床版上面を横2分割できるシートで覆い、温水高圧洗浄機を配備して除雪・排雪を軽減し、氷雪の付着を
取除く。
*コンクリート打設の対処
…コンクリートの凍害の恐れの少ない早強コンクリートを使う。コンクリートポンプ車の圧送管を打設前に予め温めて、管
内にモルタル分の凍結・付着によるトラブルを防ぐ。
*コンクリート養生
…床版全体をシートで覆い、床版下面は練炭(2m間隔毎)で3日間、5~10℃で保温する。風の影響を受け易い床版上面は、練炭の加えポリエチレンダクトへの温風給熱養生を一晩行う。保温養生後も急激な温度低下
を防ぐため、シートは型枠解体後まで残置する。
「よし、これだ。」 佐藤は作業員、協力会社を集め説明し、実行した。鉄筋組立中に大雪に見舞われた時もあったが、自ら先頭に立ち、除雪した。佐藤の入念な計画はうまくいった。
2004年3月23日。すべての舗装が終わり、みしま大橋が完成した。
「みんなの力がひとつになった。」
『延べ日数905日、就労人数約3,801人、連続無災害記録30,408時間』、の“現場力”がみしま大橋をつくりあげた瞬間だった。
『延べ日数905日、就労人数約3,801人、連続無災害記録30,408時間』、の“現場力”がみしま大橋をつくりあげた瞬間だった。